壮大な時の流れを親子で旅しよう
ここ「絵本屋cafe ぷーじ&ぷーば」の窓からは、一本のメタセコイヤの木が見える。
ひょんなことから夫婦で始めた家作り。設計士さんや建築家さんに見守られ、時に重たいお尻を押してもらいながら悪戦苦闘していた時に、さまざまな思いを込めて植えた木である。
あれから4年、当時3メートルほどだった身の丈も、今や倍以上。まだまだ幼な木の様は呈しているものの、生まれたての柔らかな葉をつけた円錐形の姿は、今年も大いに私たちを満足させてくれている。
メタセコイヤの木は、日本にも300万年前にはたくさん生えていたらしく、化石として発見されたことで「化石の木」と呼ばれていたらしい。
しかしその後の調査で、300万年前からあまり進化せず今日まで生き続けていることがわかり、有名になった木である。
300万年前……、地球上に人類が誕生するずーっと昔。ここに紹介する『せいめいのれきし』は、銀河系宇宙の誕生から現在までの生命の歴史を77ページで語っている壮大な絵本である。
舞台で上演されるという設定で、最初のページは今まさに開演のベルが鳴り、人々が席に案内され、幕が上がるのを待っている場面から始まる。
目次はプログラム、進行役(ナレーター)はその時代の語り手が担っている。
天文学者、地質学者、古生物学者、歴史家、おばあさん、そして最後は、この本の作者でもあるバージニア・リー・バートンが舞台の袖に登場して話は進んでいく。
一人で読むには小学校3、4年生くらいからが適当と思われるが、移りゆく時代ごとに繰り返される自然の変化や恐竜の出現が、右ページ画面上にわかりやすい絵で描かれているので、親子で一緒に読み合う楽しさは、5、6歳児からでも十分味わえるだろう。
そして、注目すべきは最後のページ。
「時の鎖」は刻々と現代に近づき、カチッ! 時計の音と共に
――さあ、このあとは、あなたがたのおはなしです。
その主人公は、あなたがたです。――
と結ばれている。
……ああ、確実に、未来へとつながる「時の鎖」に乗っている自分に気づかされる。気の遠くなるような長い生命の歴史の中で、たとえほんの一瞬の歴史であっても、今日から明日へとつないでいかなくては未来はないのだ……。
幼な木のメタセイコイヤも、いつか大木と見上げられる日が来るにちがいない。
できることなら、そんなメタセコイヤの下で、ぷーじの入れてくれたコーヒーを飲みながら緑のシャワーを浴びたいものである。
バージニア・リー・バートン●作・絵
石井桃子●訳
岩波書店 定価1680円
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