子どもを見つめる柔らかなまなざし
9月に入ると、那須の山々は夏と秋の交差点にさしかかります。
8年前に神奈川から那須に移り住んで強く思ったことは、新しい季節の訪れが、こんなにもはっきり感じとれること!
空、木々、生きるものに加えて、大地からほとばしる自然の放つ匂い。
そのひとつひとつが次の季節を予兆し、わずかに残されている五感をくすぐってくれます。
短い夏、この間にも「ぷーじ&ぷーば」にはたくさんの子どもたちが訪れて下さいました。
本や室内の遊びに飽きると、子どもたちは草の生い茂った庭に飛び出していきます。
私たちには、伸びすぎた草を刈ることしか思いつかないただの草むらに、子どもたちは興味津々になって挑みます。
地面に視線が近いせいでしょうか、子どもの目にはさまざまなものが飛び込んでくるようです。
飽きずに追いかけては、その行方に思いを馳せたり、自分を呼ぶ声にも微動だにせず、しゃがみ込んでじっと何かを見つめています。
どこかで見たような……射るような、それでいて、瞳の奥までキラキラした目。
大人の私たちは、このキラキラした目にどれほど寄り添える目をもっているでしょう。
子どもたちが持ち合わせている豊かな感性を受け止め、共に分かち合うことがどれほどできるのでしょうか?
……そんなことを考えていた時、ふと一冊の絵本の表紙に描かれている女の子と目が合いました。それは、マリー・ホール・エッツのロングセラー、『わたしとあそんで』の主人公の女の子でした。
原っぱへ遊びに行った女の子。
動物たちを捕まえようとしますが、みんな逃げてしまいます。
やがて女の子が池のそばの石に腰掛けてじーっとしていると、不思議なことにさっきまで怖がって逃げていた動物たちが集まってきたのです……。
淡いクリーム色をバックにした柔らかい線とシンプルな色づかいからは、本当に伝えたいことの本質を見つめようとするエッツのまなざしが感じられるかのようです。
夏の疲れがまだ身体のどこかに残っていると感じたら、大きく深呼吸をして自然界の声に耳を傾けてみてはいかがでしょう。
きっと、しばらく眠っていたさまざまな感覚の回路が動き出すに違いありません。
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