本のすばらしさを味わえる名作
今年も、「読書週間」が開催されます。
昭和22年、まだ戦火の傷跡が至るところに残っているなかで、「読書の力によって平和な文化国家をつくろう」という決意のもと、出版社、公立図書館、書店そして新聞や放送の各マスコミ機関も加わって、第一回目の「読書週間」が開かれたそうです。
時代の背景にエネルギーを感じますね。
文化の日を中心とした二週間を期間とし、今年で62回目となります。
この「読書週間」に入ると、東京ではあちらこちらの図書館等で、講座・講演・研究会などが開かれます。
めったに聞ける話ではないし、あれも参加したい、これも聞きたい!と胸を躍らせますが、二日間の講座で都心まで行くとなるとなかなか決心がつきません。
那須の山奥での暮らしをちょっぴり後悔する時です。
でも、だからこそ<本のある幸福>が以前にも増して私の心を捉えるのかもしれません。
そんな私の気持ちを察してくれている友人から教えてもらった一冊の本、『ルリユールおじさん』(ルリユールとは、製本から装丁まで60工程すべてを手仕事で行う職業のことです)。
一年前に「NHKてれび絵本」で放送されたので、ご存知の方も多いかと思います。
小さな女の子ソフィーの大事な植物図鑑が壊れてしまい、ソフィーは町の人から「ルリユール」の所へ持って行くといいと聞いて、ある路地裏の工房を訪ねます。
正確で精巧なスケッチで描かれるパリの街中。
左ページはソフィー、右ページは製本職人であるルリユールおじさんの動きが、同時平行して進められていきます。
読み手は、あたかも映画のワンシーンの中でパリの街中を散策しているような錯覚に……。
それほどに絵画としての見応えも十分な絵本です。
後半は、本場フランスでも数が少なくなったルリユールの手作業での行程が、ソフィーの興味津々の目を通したやりとりで描かれていきます。
作者のいせひでこさんが、旅の途中で出会った手職人の「書物」という文化を未来に向けてつなげようとする、自信と誇り、そして情熱が渾身の“青”に表現され、あなたを本の世界へ誘ってくれます。
10月27日は「文字・活字文化の日」です。
あらためて、この本の作者であるいせひでこさんの「本は時代を超えてそのいのちが何度でもよみがえるものだと」という言葉が心の奥に響いてきます。
嗚呼!やっぱり本はいいな!
またすばらしい本に出会えました。
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