人の死がおしえてくれること
京都市伏見区。ぷーじ(主人)の郷里です。
先日義母が亡くなり、10日間ほど帰省し、葬儀その他もろもろの手続き等を終えてきました。
避けては通れない「死」について考える時、誰しもが見習いたい、母のような最後でありたいと思えるような88年の幕引きでした。
母の家は旧街道に面していて、周囲には大河ドラマ「篤姫」に登場する「寺田屋」をはじめ「歴史的意匠建造物」に指定された家々が多くあります。
時代を遡れば、幕末の志士たちの足音も聞こえてきたことでしょう。
築100年は有に建っており、使われている木材はさらにその前から使い込まれ、欄干や床の間は外されたり傾いたりしてはいるものの、かつての匠の技があちらこちらに残っています。
晩年こそグループホームでの生活でしたが、母はこの家で暮らしてきたわけで……。
京の町家づくりという独自の生活様式の中で歴史と伝統を受け継ぎながらも、自由に広い視野をもち、まさに自然体で貫いた母の姿がありました。
大きく深呼吸をし、久しぶりに開いた一冊の絵本。
『わすれられないおくりもの』。
年老いたアナグマは、あらゆるものを知っていました。自分の死がそう遠くないことも……。
ある夜、アナグマは机に向かい手紙を書きます。
そして、長いトンネルを走っている夢を見ます。
やがて次第に身も心も軽くなり、アナグマはすっかり自由になったと感じながら異界の宇宙へと旅立ちます。
次の朝、森の仲間はアナグマの死を知ります。
アナグマが残していった手紙には、次のように書かれていました。
「長いトンネルの向こうに行くよ。さようなら アナグマより」。
森の仲間たちは深い悲しみに沈みます。
いつでもそばにいてくれたのに……。
その年初めての雪が森に降り積もっても、皆の悲しみを覆い隠してはくれませんでした。
長い冬が終わる頃、仲間たちはそれぞれアナグマから教えてもらったことを語り合います。
そして、最後の雪が消えた頃、アナグマの残してくれたものの豊かさで、いつしか悲しみは消え、楽しい思い出を話すことができるようになったのです。
「残してくれたものの豊かさ」……とは?
命には、限りがあります。
しかし、その人が生きた『証』は必ず受け継がれていくのでしょう。
親から子へ……子から孫へ……。
心の中でずっと……ずっと生き続けていくのです。
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