魔法の時間のつくり方
師走……カレンダーが最後の一枚になってしまいました。
この一年、果たしてどんな年であったか、過ぎ去った時間への惜別と来る年への祈りが重なり、いとおしさが増す12月の暦です。
少し若かった頃、家庭、子育てを右肩に、左肩には重量オーバーの仕事を載せ、夢中で日々を過ごしていた時がありました。
親子という人間関係につまづいたり、「元気な私」を無意識に演じ続けた結果、心の蝶番が音を立て始めていた……そんな時に一冊の絵本に出会いました。
『A Time to Keep』。
日本で出版される前のことです。
英語での解釈はできなくても、柔らかな色彩で描かれた愛らしい子どもたちの描写を通して、古き良きアメリカの暮らしが心の安らぎを運んできてくれました。
その後しばらくして再び出会った時の喜びは、言うまでもありません。
作家の名はターシャ・テューダー。
題名は、『輝きの季節』となっていました。
それから間もなく、アメリカ・バーモント州での自然と共に生きる暮らしがテレビで紹介され、多くの人の知るところとなりました。
今回ご紹介する『ベッキーのクリスマス』は、ターシャの描く、愛にあふれ喜びに満ちた日常生活のなかでもっとも大切に迎えた〈クリスマス〉への道のりが、実話を元に描かれています。
「テューダー家では、クリスマスは一日だけのことではありません」との言葉で始まり、当日までの過程を楽しむ、まさに〈魔法の季節〉なのです。
日本のイベント化されたクリスマスに慣れてしまった私たちには、そのすべてがため息の出るような別世界です。
主体的で自立した生き方を世界中に発信し、多くの共感や支持を得てきたターシャでしたが、残念なことに、今年の6月に家族に見守られながら93歳で亡くなりました。
つい数年前のことです。
吹雪を心配して電話をくれた友人に対し、ターシャはいつもの口調で「これ以上ないくらい元気よ! 8フィート(2.4m)も降ったのよ! 素敵だわ!!」と答えたそうです。
「想像力を衰えさせないこと」
「物事を楽しむ感性を持ち続けること」
ターシャの言葉には、あこがれを現実化する魔法の要因が詰まっています。
易きに流されやすい私のなかにも小さな暖かいキャンドルが灯ったような気がします。
新しい年は目の前です。皆様も、どうぞよいお年を!
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