言葉のリズムに身を委ねよう
これは、0歳の赤ちゃんの時から絵本で楽しく温かいひとときを持ってもらおうと、“Share Books with your baby”というキャッチフレーズで1992年にイギリスで始まりました。
赤ちゃんに絵本を“読む”のではなく、本を開いている時間の楽しさをお母さんと分かち合う(share)、そんなひとときを応援する運動です。
日本でも2000年の「子ども読書年」に紹介され、すべての赤ちゃんと保護者を対象とした市区町村単位の事業として導入され始めました。
保健センターや図書館などが連携し、さらに多くのボランティアが加わり、日本全国に1804ある自治体のうち687市町村で実施されています(2009年2月末日現在)。
私の住む那須町でもこの『ブックスタート』を目標に絵本の力を子育てに活かそうと、2006年から保健センターで行われる「10ヶ月健診」に図書館からたくさんのファーストブック(赤ちゃんが最初に出会う本)を持ち込み、紹介してきました。
そして2009年4月、「絵本は心を育てるミルクです」という関係者の思いが実を結びました。
保健師、図書館員、支援ボランティアの間でピックアップされた三冊の絵本の中からお母さんに一冊選んでもらい、それをプレゼントする『ブックスタート』がついに始まったのです。
「0歳児に絵本?」と危惧される方がいらっしゃるかもしれませんが、赤ちゃんと絵本を読み合うとき、言葉の意味はそれほど重要ではありません。
意味の世界に入っていくのはもっとずっと後のことです。
赤ちゃんは、ただひたすら、言葉の持つリズム、メロディ、響きのおもしろさや心地よさの中で楽しみ、遊びます。
そして何より、そんな赤ちゃんの笑顔に接することで「人が育つとはどういうことか」「心を通わせるにはどう向き合えばよいのか」など、理屈を超え、ほのぼのと親になれる心を絵本は届けてくれます。
愛される喜び、愛せる喜びを経験することによって、子育ての極意ともいうべき「自分育て」への道へとつながっていくのでしょう。
絵本はそんな機会をももたらせてくれます。
「もこ」「にょき」「ぽろり」など出てくる言葉は擬音ばかり。
赤ちゃんの宇宙観的世界が理解するにはこれで十分です。
「し~ん」から「もこ」となった瞬間、世界は動き始めます。
赤ちゃんの感性に身を委ね、親子でいっしょに楽しみましょう。
ジェズ・オールバラ●作・絵
徳間書店 定価1470円
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